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メルセデス・ベンツとスマートの関係は?ブランドの歴史と車種を整理

初代スマートfortwoと新世代smart #1がメルセデスのデザインスタジオ前に並ぶ情景 メルセデス・ベンツ

スマートは現在、メルセデス・ベンツだけの子会社ではなく、同社と浙江吉利控股集団が共同運営する独立ブランドです。

1994年にダイムラー・ベンツとスウォッチ側の協業から誕生し、1998年にダイムラーの完全子会社へ移行。現在は両社による50対50の合弁事業として、電動SUVや新型2人乗りEVを展開しています。

スマートとメルセデス・ベンツの現在の関係は?

2026年8月1日現在、スマートはメルセデス・ベンツAGと浙江吉利控股集団が共同で運営する自動車ブランドです。

検索ユーザーが混同しやすい点を、最初に3つへ整理します。

  • 現在:メルセデス・ベンツAGと浙江吉利控股集団による共同事業
  • 過去:1998年から現在の合弁体制へ移るまで、ダイムラーグループが単独で保有
  • 車種としての扱い:AクラスやCクラスのようなメルセデス・ベンツの車名ではなく、独立したブランド

現在の運営主体は「smart Automobile Co., Ltd.」です。

同社は2020年1月8日に正式設立され、登録資本金は54億元。メルセデス・ベンツAGと浙江吉利控股集団が、それぞれ27億元相当を拠出する対等な合弁会社として発足しました。スマートニュースルーム

そのため、「スマートは現在もメルセデス・ベンツの完全子会社」と説明するのは正確ではありません。

一方で、メルセデス・ベンツとの関係が切れたわけでもありません。新世代スマートでは、メルセデス・ベンツのグローバルデザインチームが内外装デザインを担い、中国側のスマート研究開発部門と吉利グループの生産・供給基盤が車両開発を支えています。スマートニュースルーム+1

役割を簡潔に整理すると、次のようになります。

企業・組織 主な役割
メルセデス・ベンツAG ブランド資産の提供、内外装デザイン、商品イメージの構築
浙江吉利控股集団 生産・供給網、電動車関連の技術基盤、事業運営への出資
smart Automobile Co., Ltd. 商品企画、研究開発、ブランド運営、世界市場への展開
smart Europe GmbH 欧州市場での販売、マーケティング、アフターサービス

つまり現在のスマートは、単に「ベンツがつくった小型車」ではありません。

メルセデスのデザイン力と、吉利側の開発・生産基盤を組み合わせた国際共同ブランドと捉えるのが、最も実態に近い説明です。

スマートはメルセデス・ベンツの車名ではない

スマートは、メルセデス・ベンツAクラス、Cクラス、GLAのような商品シリーズではありません。

独自のブランド名と車種体系を持ち、歴代車も「smart fortwo」「smart forfour」「smart roadster」「smart #1」のように、スマートブランドのモデルとして販売されてきました。

日本では親しみを込めて「ベンツのスマート」「小さなベンツ」と呼ばれることがあります。

しかしメーカーやブランドを正確に区別する場合は、「メルセデス・ベンツの一車種」ではなく、「メルセデスと深い資本・開発関係を持つスマートブランド」と表現すべきでしょう。


スマートは誰が設立した?資本関係の変化を年表で整理

スマートの直接的な出発点は、スウォッチ創業者ニコラス・G・ハイエックとダイムラー・ベンツの協業です。

ただし、都市で使う超小型車の研究は、それ以前からダイムラー側で進められていました。

スマート公式のブランド史によると、ダイムラーは1972年に都市向け小型車の構想を進め、1981年には近距離移動車「NAFA」を製作しています。

NAFAは小さな設置面積と効率的な室内空間を追求した試作車でしたが、当時の小型車技術ではダイムラーが求める安全基準を満たすことが難しく、市販化には至りませんでした。スマートニュースルーム

その後、時計をファッションや文化の領域へ広げたハイエックが、スウォッチのように小さく、色彩豊かで、都市生活に適した自動車を構想します。

この発想と、ダイムラーが蓄積してきた小型車の安全設計が重なり、1994年にMicro Compact Car AGが設立されました。

年 主な出来事 メルセデスとの関係
1972年 ダイムラーが都市向け小型車構想を推進 スマート誕生前の社内研究
1981年 近距離移動車NAFAを製作 空間効率と安全性を研究
1994年 ダイムラー・ベンツとSMHがMicro Compact Car AGを設立 スウォッチ側との共同事業
1997年 フランクフルト・モーターショーで車両を公開 量産前の構想を発表
1998年 フランス・ハンバッハで量産・販売開始 同年10月末にダイムラーの完全子会社へ移行
2019年 メルセデス・ベンツと浙江吉利控股集団が合弁事業を発表 単独保有から共同運営へ転換
2020年1月 smart Automobile Co., Ltd.を正式設立 双方が対等に出資
2022年4月 新体制初の量産車smart #1を世界初公開 メルセデスがデザインを担当
2026年 smart #6 EHDを中国で発売、smart #2を公開予定 商品構成をSUV、セダン、都市型2人乗りへ拡大

「smart」というブランド名の由来

スマート公式は、名称の由来を「Swatch Mercedes ART」と説明しています。

Swatchの「S」、Mercedesの「M」、そして創造性を表す「art」を組み合わせた名前です。スマートニュースルーム

ただし、完成したクルマはメルセデス・ベンツの単純な縮小版ではありませんでした。

スウォッチ側が持ち込んだ色彩、組み替え、個性、既存の自動車販売に縛られない商品思想。そこへダイムラーの安全技術と量産設計が加わり、初代スマート独自の姿が生まれました。

1998年にスウォッチ側が保有株式を売却

量産車の販売が始まった1998年、資本関係は早くも変化します。

スウォッチグループは、Micro Compact Car AGに保有していた19%の株式をダイムラー・ベンツへ売却しました。

株式移転は1998年10月31日付で実施され、同社はダイムラー・ベンツの100%子会社になっています。スウォッチ側の発表日は同年11月4日です。Swatch Group

売却の背景には、当初検討されていたハイブリッドシステムを小さな車体へ収めることが難しく、計画が見送られた事情もありました。

ここがスマートの歴史を理解する重要な分岐点です。

スマートは、時計会社が単独で設計したクルマでも、最初からメルセデスだけで生み出した小型車でもありません。

異業種の共同構想として始まり、市販開始直後にダイムラーの単独事業となり、約20年後には再び国際的な共同事業へ変わったブランドなのです。

※画像はAIによるイメージ

メルセデスの技術と新世代スマートは何が違う?

初代スマートにおけるメルセデスの技術的な象徴が、トリディオン・セーフティセルです。

これは乗員空間を囲む強固な骨格で、初代モデルでは構造部分を外観上も明確に見せるデザインが採用されました。

スマート公式のブランド史では、1995年にフランクフルトのIAAで安全セルの試作構造を公開し、その後、衝突実演や走行試験を重ねて量産へ進んだ流れが示されています。スマートニュースルーム

全長の短いクルマは、大型車のように前後方向へ長い衝撃吸収空間を確保できません。

そこでスマートは、単純に車体を軽く薄くするのではなく、乗員の周囲に明確な安全骨格を置きました。

さらに、その骨格をボディパネルの内側へ隠さず、色や質感を変えて見せています。

安全部品が、そのままクルマの顔になる。

僕はこの設計に、ダイムラーの工学とスウォッチ的な視覚表現が最も鮮明に重なった瞬間を見るのです。

初代fortwoと新世代モデルの寸法差

現在のスマートがどれほど変化したかは、車体寸法を見ると分かりやすくなります。

モデル 全長 ホイールベース 乗車定員・車型
3代目smart fortwo 約2,690mm 約1,870mm 2人乗りシティカー
smart #1 4,270mm 2,750mm 5人乗りコンパクトSUV
smart #3 4,400mm 2,785mm 5人乗りSUVクーペ
smart #5 4,705mm 2,900mm ミッドサイズSUV

smart #1は全長4,270mm、ホイールベース2,750mm。smart #3は全長4,400mm、ホイールベース2,785mmです。スマートニュースルーム+1

2024年8月28日に世界初公開されたsmart #5は、全長4,705mm、ホイールベース2,900mmへ拡大しました。スマートニュースルーム

3代目fortwoと#5を比べると、全長差は約2メートルに達します。

これは単なるモデルチェンジではありません。

従来のスマートが「都市で必要な空間を最小の車体へ凝縮するブランド」だったのに対し、新世代は「電動車の技術、室内空間、デジタル機能をプレミアム市場へ広げるブランド」へ変わっています。

一方で、#1や#3にも、四隅近くへタイヤを配置して室内長を稼ぐ考え方や、短い前後オーバーハングが残されています。

大きさは変わっても、限られた全長から広い室内をつくる設計思想は、完全には失われていません。

メルセデスの役割は工学中心からデザイン中心へ

初代スマートでは、ダイムラー側の衝突安全、車体構造、量産品質がブランド成立の土台になりました。

現在の新世代では、役割の重心が変わっています。

メルセデス・ベンツは主にデザインとブランド表現を担い、研究開発や生産は中国を中心としたスマート・吉利側の体制で進められています。スマートニュースルーム+1

初代が「スウォッチの発想とダイムラーの工学」だったとすれば、新世代は「メルセデスのデザインと吉利側の電動車基盤」です。

スマートは、時代ごとに協業相手の強みを組み替えながら存続してきたブランドだといえます。


スマートの歴代車種は?fortwoから#6まで整理

スマートの歴史は、2人乗りのfortwoだけでは語り切れません。

4人乗りのforfour、軽量スポーツカーのroadster、屋根と通常のドアを省いたcrossblade、電気自動車、SUV、ファストバックセダンへと用途を広げてきました。

車種・シリーズ 主な登場・生産時期 特徴
city-coupé/fortwo第1世代 1998~2007年 ブランドの原点となった2人乗り都市型車
city cabrio/fortwo cabrio 2000年~ 小型ボディと開閉式ルーフを組み合わせたモデル
crossblade 2002年 屋根、フロントウインドー、通常のドアを大胆に省略
roadster/roadster coupé 2003~2005年 低い車体と軽快さを重視した2人乗りスポーツモデル
forfour第1世代 2004~2006年 4人乗り・5ドアへ用途を拡大
fortwo第2世代 2007~2014年 安全性や安定性、快適性を改善
fortwo第3世代 2014~2024年 ルノーとの共同開発による後輪駆動シティカー
forfour第2世代 2014年~ ルノー・トゥインゴと基盤を共有した4人乗りモデル
electric drive/EQシリーズ 2007年実証開始 fortwo、cabrio、forfourを段階的に電動化
smart #1 2022年世界初公開 新合弁体制初の電動コンパクトSUV
smart #3 2023年世界初公開 クーペ調の電動SUV
smart #5 2024年世界初公開 ブランド初のミッドサイズSUV
smart #6 EHD 2026年中国発売 ブランド初のプレミアム・ファストバックセダン
smart #2 2026年10月世界初公開予定 fortwoの思想を継ぐ新世代2人乗りEV

スマート公式のブランド史では、初期モデルを1998~2000年のcity-coupé、2000年のcity cabrio、2003~2005年のroadster系として整理しています。スマートニュースルーム

forfourは2世代存在する

初代forfourは2004年に登場しました。

スマートらしい色使いやトリディオン・セーフティセルの意匠を4人乗り・5ドアへ広げたモデルで、三菱自動車との協業によって生産されています。

しかし販売は長続きせず、ダイムラークライスラーは2006年に生産を終了しました。公式年次報告書でも、同年にforfourの生産を停止したことが記録されています。Mercedes-Benz Group+1

2代目forfourは2014年、3代目fortwoと同時に世界初公開されました。

ルノー・日産アライアンスとの共同開発により、エンジンを後方へ搭載するレイアウトを採用。全長約3.5メートルの中に4人分の座席を収めました。Mercedes-Benz Group+1

fortwoが「用途を2人に絞ることで小さくした車」なら、forfourは「小さな思想を維持しながら家族用途へ広げた車」です。

同じスマートでも、何を削り、何を残すかという答えが異なっていました。

roadsterはスマートの軽さをスポーツへ転換した

2003年に登場したroadsterとroadster coupéは、スマートの小さなエンジンと軽量な車体をスポーツカーへ応用したモデルです。

大排気量や圧倒的な最高速度ではなく、低い着座位置、軽い車体、路面との距離感によって運転の楽しさをつくりました。

生産期間は2003年から2005年と短いものの、スマートが単なる通勤用シティカーではなく、独自の運転感覚を持つブランドであることを示した一台です。スマートニュースルーム

#1・#3・#5・#6でブランドの領域が拡大

smart #1は2022年4月8日にベルリンで世界初公開されました。

新合弁体制による最初の量産モデルで、2人乗りのマイクロカーではなく、5人乗りの電動コンパクトSUVとして登場しています。スマートニュースルーム

smart #3は2023年4月17日に上海で世界初公開されました。

全長4,400mmのSUVクーペで、#1より低く長い車体によって、スポーティーな商品性を強めています。スマートニュースルーム

smart #5は2024年8月28日、オーストラリアのバイロンベイで世界初公開されました。

ブランド初のミッドサイズSUVであり、スマートが都市中心の小型車ブランドから、家族利用や長距離移動まで含む商品群へ移ったことを象徴しています。スマートニュースルーム

さらに2026年4月には、smart #6 EHDが世界初公開され、同年6月11日に中国市場で正式発売されました。

#6 EHDはスマート初のプレミアム・ファストバックセダンです。純粋なバッテリーEVではなく、Electric Hybrid Driveを採用しており、「スマートは電気SUVだけのブランド」という理解も、すでに最新の商品構成とは合わなくなっています。スマートニュースルーム+1

※画像はAIによるイメージ

2024年に生産終了したのはスマートブランド全体なのか?

2024年に終了したのは旧世代スマートの生産であり、スマートブランドそのものではありません。

メルセデス・ベンツ日本のオーナー向けページには、スマートについて「2024年4月現在で生産終了」と記載されています。

同じページでは、スマートを「メルセデス・ベンツのクルマ作りのノウハウを活かして開発されたマイクロコンパクトカー」と説明し、既存オーナー向けのサービス情報を案内しています。メルセデス・ベンツ

このページの文脈から判断すると、「生産終了」は日本で正規輸入されてきたfortwoなど、従来型スマートについての案内と読むのが自然です。

公式文面が世界のスマートブランド全体の終了を明言しているわけではないため、「2024年にスマート社が消滅した」と解釈するのは適切ではありません。

世界では2024年にsmart #5が発表され、2026年には#6 EHDが中国で発売されました。

つまり、旧世代の2人乗り・4人乗りモデルが終了した一方、ブランドは新体制のもとで商品構成を拡大しています。

smart #2は2026年10月にパリで世界初公開予定

ブランドの原点だった2人乗りモデルも、完全に消えたわけではありません。

スマートは新型2人乗り電気自動車「smart #2」を開発しており、2026年7月20日には世界各地で量産前の走行試験を進めていると発表しました。

量産モデルは2026年10月のパリ・モーターショーで世界初公開される予定です。スマートニュースルーム

ここで注意したいのは、2026年10月に確定しているのは「世界初公開」であり、「一般販売開始」ではないことです。

発売国、価格、納車開始時期などは別途発表される情報であり、現時点で2026年中の発売まで断定することはできません。

#2はメルセデス・ベンツのグローバルデザインチームが造形を担当し、スマートの研究開発チームが専用の電動コンパクトアーキテクチャを開発しています。

また、fortwoで知られた四隅へタイヤを配置する姿勢や、次世代トリディオン・セーフティセルも採用される方針です。スマートニュースルーム+1

SUVやセダンへ広がったスマートが、もう一度「2人のための都市型車」へ戻る。

#2は懐古的な復刻ではなく、現在の衝突安全基準、電池、静粛性、デジタル技術を使って、fortwoの問いを解き直すモデルだと考えられます。


高坂遼の考察|スマートらしさは車体寸法より思想に残る

ここからは、自動車ライターとしての私見です。

スマートとメルセデス・ベンツの関係を理解するうえで、最も重要なのは、資本関係も技術分担も一度として固定されていないことだと僕は考えます。

1994年はダイムラーとスウォッチ側の共同事業でした。

1998年にはダイムラーの完全子会社となり、2019年から2020年にかけて浙江吉利控股集団との共同事業へ再編されました。

同じスマートという名前でも、誰が設計し、誰が開発し、どこで生産するかは時代によって変わっています。

その変化を無視して「スマートはベンツの小型車」とだけ説明すると、初代の成り立ちも、現在の#1や#5も正しく見えません。

数字から分かるスマートの最大の変化

初代から3代目までのfortwoは、全長を約2.5~2.7メートルに抑え、乗車定員を2人へ絞ることで都市空間の問題に答えました。

対する#1は4,270mm、#3は4,400mm、#5は4,705mmです。

この寸法差は、スマートが「都市に必要な最小単位」を追求するブランドから、「広い室内を持つ電動プレミアム車」を提供するブランドへ移ったことを示しています。

ただし、僕は車体が大きくなっただけで、スマートらしさが完全に失われたとは考えていません。

#1は全長に対して2,750mmという長いホイールベースを持ち、#5も全長4,705mmに対して2,900mmを確保しています。

前後のオーバーハングを短くし、タイヤを四隅へ寄せ、限られた外寸から室内を広く取る。

これはfortwoにも通じる「空間を無駄にしない設計」です。

変わったのは思想そのものではなく、想定する乗員数と用途でしょう。

初代は2人の日常を凝縮しました。

新世代は5人の生活、荷物、遠出、デジタル体験まで一台へ収めようとしています。

#2がブランドの輪郭を取り戻せるか

一方で、電動SUV市場には多くの競合車が存在します。

デザインがメルセデス由来であることや、装備が豪華であることだけでは、スマートでなければならない理由は弱くなります。

だからこそ、僕は#2の存在を重要だと感じています。

スマートというブランドが最初に突きつけたのは、「大きなクルマを少し小さくする」という提案ではありませんでした。

都市で実際に必要な人数と空間から、自動車を設計し直すという問いです。

#2が初代の外観を模倣するだけなら、懐かしさ以上の価値は生まれにくいでしょう。

しかし、2人乗り、超小型、電動、安全、静粛性、旋回性という要素を現代の技術で再構成できれば、混雑する都市でスマートが再び明確な意味を持つ可能性があります。

メルセデスの価値は「高級感」ではなく統合力にある

現在のスマートに対するメルセデスの役割は、内装を豪華に見せることだけではありません。

構造、機能、ブランドの歴史を一つの造形へまとめ、遠くから見てもスマートだと感じられる輪郭をつくること。

その統合力こそ、メルセデスが提供できる大きな価値だと僕は見ています。

吉利側の開発速度、生産規模、電動車技術と、メルセデスのデザインがうまく結びつけば、スマートは「ドイツ車か中国車か」という単純な分類を超えられます。

逆に両者の役割が表面的につながるだけなら、スマートは競合の多い電動車市場へ埋もれてしまうでしょう。

ブランドの答えは、出資比率だけでは決まりません。

ハンドルを切ったときの自然さ、狭い場所での扱いやすさ、乗員が感じる安心感、そして一目で分かる姿。

最終的には、路上を走る一台の完成度が、メルセデスとスマートの関係に意味を与えるのだと思います。


まとめ

スマートとメルセデス・ベンツの関係は、次の5点に整理できます。

  • スマートはメルセデス・ベンツの車種名ではなく、独立した自動車ブランド
  • 1994年にダイムラー・ベンツとスウォッチ側の共同事業から誕生
  • 1998年10月31日にダイムラー・ベンツの100%子会社へ移行
  • 現在はメルセデス・ベンツAGと浙江吉利控股集団による共同事業
  • 2024年に旧世代車は生産終了したが、ブランドは#1、#3、#5、#6などを展開して存続

新型2人乗りEVのsmart #2は、2026年10月のパリ・モーターショーで世界初公開される予定です。

スマートは「小さなベンツ」から始まったブランドではありません。

スウォッチの発想、ダイムラーの安全技術、メルセデスのデザイン、吉利側の開発・生産力を時代ごとに組み替えながら、都市と自動車の関係を問い続けてきたブランドなのです。


よくある質問

スマートは現在もメルセデス・ベンツの子会社ですか?

メルセデス・ベンツだけが保有する完全子会社ではありません。

smart Automobile Co., Ltd.は、メルセデス・ベンツAGと浙江吉利控股集団が共同で設立した合弁会社です。

ただし1998年から現在の合弁体制へ移るまで、ダイムラーグループが単独で保有していた時期はあります。

スマートは誰がつくったブランドですか?

直接的には、スウォッチを率いたニコラス・G・ハイエックとダイムラー・ベンツの協業から生まれました。

1994年にMicro Compact Car AGが設立され、1997年に車両を公開、1998年に量産と販売が始まっています。

2024年にスマートはなくなったのですか?

なくなっていません。

従来型fortwoなどの旧世代車は生産を終了しましたが、スマートブランドは新体制のもとで存続しています。

2026年にはsmart #6 EHDが中国で発売され、smart #2も同年10月に世界初公開される予定です。


参照した一次資料

  • smart Newsroom「Heritage」。1972年の都市型車構想、1981年のNAFA、1994年の協業、名称の由来、初期車種の年代を確認。参照日:2026年8月1日。スマートニュースルーム
  • Swatch Group「The Swatch Group sells its smart participation to Daimler-Benz」(1998年11月4日公開)。19%の株式売却と1998年10月31日付の完全子会社化を確認。参照日:2026年8月1日。Swatch Group
  • smart Newsroom「Mercedes-Benz and Geely Holding formally established global joint venture “smart Automobile Co., Ltd.”」(2020年1月8日公開)。出資者、登録資本金、役割分担を確認。参照日:2026年8月1日。スマートニュースルーム
  • smart Newsroom「Tomorrow is yours with the smart #1」(2022年4月8日公開)。#1の世界初公開日と車体寸法を確認。参照日:2026年8月1日。スマートニュースルーム+1
  • smart Newsroom「Chase the Thrill The All-new smart #3 Celebrated its World Premiere in Shanghai」(2023年4月17日公開)。#3の公開日と車体寸法を確認。参照日:2026年8月1日。スマートニュースルーム
  • smart Newsroom「smart #5 World Premiere」(2024年8月28日公開)。#5の公開場所、車体寸法、商品上の位置づけを確認。参照日:2026年8月1日。スマートニュースルーム
  • smart Newsroom「Expanding the Premium Product Portfolio smart Launched the #6 EHD First in the Chinese Market」(2026年6月11日公開)。#6 EHDの中国発売を確認。参照日:2026年8月1日。スマートニュースルーム
  • smart Newsroom「On the Road to Paris: smart #2 Undergoes Global Testing Ahead of World Premiere」(2026年7月20日公開)。#2の試験状況と2026年10月のパリ・モーターショー世界初公開予定を確認。参照日:2026年8月1日。スマートニュースルーム
  • メルセデス・ベンツ日本「for smart owner」。従来型スマートの説明と「2024年4月現在で生産終了」の記載を確認。参照日:2026年8月1日。メルセデス・ベンツ

執筆:高坂 遼(自動車ライター|ドライビング・フィロソファー|モーターストーリーテラー)

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