夜のバイパス。路肩の白線が、いつもより細く、遠い。
ハザードを点けた瞬間、車内の空気だけが少し変わる。——そういう場面を、僕は何度か見てきた。
そして、そこで必ず分かれ道になるのが「知っているかどうか」だ。60プリウスには、スペアタイヤを“積まない”前提で設計された仕様がある。パンクが怖いんじゃない。自分の車が、何を持っていないのかを知らないことが、いちばん怖い。
僕は開発現場の密着取材で、設計者が「安全」と「使い勝手」と「重量」を、ミリ単位で取捨選択する瞬間を見てきた。
スペアタイヤ非搭載は、手抜きじゃない。軽量化や床下パッケージング、荷室の思想——そういう“理由のある選択”だ。
ただし、選択には代償がある。応急修理キットで済むパンクもあれば、そうでない状況もある。だからこそ、最初に持つべきなのは勇気ではなく、判断基準だ。
この記事では、プリウスの「スペアタイヤの有無」を60プリウス目線で整理し、必要ならスペアタイヤ交換を“安全に終えるための作法”を、取扱説明書の考え方に沿って噛み砕く。
スペックの話より先に、帰り道を守るための設計図を一緒に描こう。読み終えたとき、あなたの不安は「準備」に変わっているはずだ。
60プリウスにスペアタイヤが「ない」って本当?——まず“前提”を確認する

ここ、いちばんワクワクするところです。
なぜなら「60プリウスにスペアタイヤがない=不便」みたいな単純な話じゃなくて、トヨタが“どんな安心の形”を選んだのかが、取扱説明書の一文にそのまま出ているから。
結論から言うと、少なくともPRIUS PHEV(60系)の取扱説明書には、こう明記されています。
「この車両には、スペアタイヤが搭載されていません」。そしてパンク時は、タイヤパンク応急修理キットでの応急修理が基本になる。
つまり60プリウスは、スペアタイヤで“物理的に安心を積む”のではなく、軽量化・荷室の使い方・床下パッケージングまで含めて、別のルートで安心を組み立てている。
この思想を知るだけで、同じクルマの見え方が変わります。ここが面白い。
さらにHEV側の取説を見ると、「応急修理キット装着車」と「応急用タイヤ(テンパー)装着車」で章が分かれていて、プリウスには“複数の前提”があることが読み取れる。
だからこの記事ではまず、「あなたのプリウスはどっちの前提?」を最短で整理します。
前提が分かった瞬間に、やるべきことが一本道になる。それが、パンクの怖さを一気に小さくしてくれる。
“積んでない”のは欠点じゃない。設計の選択だ。
でも、選択には「条件」と「手順」が付いてくる。——そこまで含めて、60プリウスは面白い。
でも「積める」仕様もある——60プリウスのスペアタイヤはメーカーオプション

ここ、正直ちょっとテンション上がるポイントです。
「60プリウス=スペアタイヤなし」で話が終わりがちなんですが、実はトヨタの資料をちゃんと追うと、“選べる余地”が残されている。つまり、プリウスはあなたの使い方に合わせて安心の作り方をカスタムできるんです。
トヨタの主要諸元・注記を読むと、スペアタイヤはメーカーオプション。しかも面白いのが、単体で「タイヤだけ」じゃない。
ジャッキ/ジャッキハンドル/ハブナットレンチまで“セット”扱いとして明記されている。つまりメーカー側が「装着するなら、実際に使える状態で渡す」という設計思想を見せてくる。ここがいい。
そして、スペアタイヤを選ぶと条件がガラッと変わります。
この“トレードオフの見せ方”が、読むほどにワクワクする。
スペアタイヤを選択すると——
- タイヤパンク応急修理キットは非装着
- ラゲージトレイが「低床タイプ → 高床タイプ」に変更
……つまり「非常時の復帰力」を手に入れる代わりに、日常の荷室の使い方(床下の使い方)も一緒に設計し直される。
単なるオプション追加じゃなくて、クルマのパッケージが“別の顔”になるんです。
低床・高床が変わると、何が変わる?(=日常の使い勝手)
たとえばメディア試乗記では、HEVの荷室(後席使用時)が410Lで、床下にタイヤパンク応急修理キット等が収まる旨が触れられている。
ここから分かるのは、60プリウスの床下は「空きスペース」じゃなくて、最初から収納として使い切る思想で組まれているということ。
さらにResponseの実体験記事でも、(文脈はPHEVの荷室差だが)スペアタイヤ装着でフロアが“ハイデッキタイプ”になると記述されている。
つまりスペアタイヤを選ぶと、荷室の“床の高さ”という日常の触感まで変わる。ここを知らないまま選ぶと「思ってたのと違う」になりやすいけど、逆に言えば——知って選べば、納得感が一気に増す。
スペアタイヤは“追加装備”じゃない。
60プリウスの使い方を、自分仕様に組み替えるスイッチだ。
パンク直後にやるべき「順番」——プリウスは、焦りに弱い

ここから先は、“知ってる人”が一気に強くなるパートです。
パンクって、タイヤが凹む出来事じゃなくて、判断力が凹む出来事なんですよね。焦ると、人は順番を飛ばします。だからトヨタの取説も、最初に書いているのは修理のコツじゃなくて、まず安全確保です。ここがいちばん大事。
逆に言うと、順番さえ押さえれば、パンクは“詰みイベント”じゃなくなります。
僕自身、取材で何度も見てきましたが、落ち着いて対応できる人は、例外なく最初の3分で勝負を決めています。
- 安全な場所へ移動(地面が固く平らな場所)
まずは「止める場所」で9割決まります。ここで無理をしない。 - ハザード点灯、Pレンジ、パーキングブレーキ
“自分の存在を見せる”のが最優先。次に車両固定。 - システム停止(HV/電源OFF)
作業に入る前の基本動作。ここを飛ばすと全部が雑になります。 - 状況確認(刺さり物か、裂け・側面損傷か)
「応急修理でいける?」を判断するための観察タイム。 - 方針決定:応急修理キット/応急用タイヤ交換/ロードサービス
ここで迷わないために、この記事が存在します。
この5ステップは、言ってしまえば“パンク対応のOS”です。
一度インストールすると、次に同じ場面が来ても、手が勝手に動く。
不安を消す方法はふたつ。積むか、知るか。
まずは「止まって」「見て」「決める」。——順番が、あなたの味方になる。
応急修理キットは万能じゃない——“直せるパンク”と“直せないパンク”

ここ、誤解されがちなんですが……実は僕はこの章を書くのがいちばん好きです。
なぜなら「応急修理キット=とりあえず安心」という雑なイメージを、取扱説明書の“線引き”で一気にクリアにできるから。
60プリウス(PHEV)を安心して楽しむなら、ここを知ってるだけで強いです。
PHEVの取説では、応急修理キットで対応できるのは「釘やネジなどが刺さった程度の軽度なパンク」と明記されています。
さらに、損傷の状況によっては修理できない場合があること、そして応急修理はあくまで一時的な処置で、できるだけ早い修理・交換が必要だとハッキリ書いている。ここが重要。
つまり、応急修理キットは“魔法の道具”じゃない。
帰還装置です。安全な場所まで戻るためのもの。
この発想に切り替えると、パンク時の判断が驚くほど簡単になります。
「直すかどうか」じゃなくて、「帰れるかどうか」で考える。
そうすると迷いが減って、次の一手(修理工場へ行く/ロードサービスを呼ぶ)が早くなる。
応急修理キットのゴールは“完治”じゃない。
あなたを、ちゃんと家まで連れて帰ること。
プリウスのスペアタイヤ交換(応急用タイヤ装着車)——正しい作法は数字で決まる

ここからが、個人的にいちばん“楽しい”ところです。
なぜなら、スペアタイヤ交換って「力技」じゃなくて、手順と数値で勝てる世界だから。慣れてなくても、落ち着いて“型”に沿えば、ちゃんと安全に終わる。
この章では応急用タイヤ(テンパー)装着車を前提に、要点だけを「外さない」形でまとめます。細部は必ず取扱説明書に従ってください。
コツは気合いじゃない。順番と数字。
ここを押さえると、パンク対応が「怖い」から「できる」に変わります。
交換前のチェック(事故を避ける“儀式”)
ジャッキアップの前に、まず“事故の芽”を全部潰します。ここが一番大事。
- 車体を持ち上げる前に:安全な場所/Pレンジ/パーキングブレーキ/ハザード
- 輪止め(できれば):車両が動く可能性をゼロに近づける
- ジャッキは指定位置へ:ここを外すと、作業が一気に危険になる。
ざっくり手順(要点だけ)
流れはシンプルです。ポイントは「持ち上げる前にやること」と「締める順番」を守ること。
- ナットを少しだけ緩める(上げる前)
- ジャッキアップ
- タイヤを外し、応急用タイヤを装着
- 手で仮締め → 車体を下ろす
- 規定トルクで本締め
締め付けトルク:103N・m(ここだけは“感覚”禁止)
ここが、この章の主役。
取説にはホイールナットの締め付けトルクとして103N・m(1050kgf・cm)が明記されています。つまり、メーカーが「この強さで締めれば安全」という答えを出している。
103N・mは、あなたの手の感覚より信用できる。だからこそ、ここだけは感覚でやらない。
「締めたつもり」が一番危ない。
103N・mで締めると、安心が“再現可能”になります。
応急用タイヤ装着中は80km/h以上で走らない
交換できたら終わり、じゃありません。最後に“走り方のルール”が残ります。
応急用タイヤ使用時は、80km/h以上で走行しない注意が明記されています。応急用タイヤは高速走行に適していない、という理由もセット。
ここを守るだけで、応急用タイヤはきちんと「帰るためのタイヤ」になります。
交換はゴールじゃない。
“安全に戻る速度”までが、スペアタイヤ交換の作法です。
「スペアタイヤがない」60プリウスの現実解——工具が載っていない場合がある

ここ、この記事の“宝箱”みたいな章です。
「スペアタイヤがないなら、応急修理キットでいいじゃん」と思った瞬間に、次の落とし穴が待っている。
それが“工具がそもそも載っていない場合がある”という現実です。知った瞬間、備えの優先順位がガラッと変わります。
PHEVの取説(タイヤ交換のページ)には、応急修理キットが標準装着のため、輪止め/ホイールナットレンチ/ジャッキ/ジャッキハンドルが搭載されていないこと、そして販売店で購入できることが明記されています。
つまり、60プリウスは「修理キットがあるから大丈夫」ではなく、“大丈夫にしたいなら、道具は自分で揃える”設計でもある。ここが面白い。
さらにHEVの「応急修理キット装着車」でも、ホイールナットレンチ/ジャッキ/ジャッキハンドルは工場出荷時に搭載されていない旨の注記があります。
つまりPHEVだけの話じゃない。プリウス全体で、“軽量化とパッケージングの代わりに、備えはユーザー側で最適化してね”というメッセージが見えるんです。
スペアタイヤがないことより、道具がないことの方が“詰む”。
逆に言えば、道具さえ揃えれば、60プリウスはちゃんと強くなる。
“備え”チェックリスト(僕ならこれだけは積む)
ここは実用一点。僕なら、最小構成でこうします。
「積みすぎ」は続かないので、“続く備え”を優先。
- 反射ベスト/懐中電灯(夜の路肩は想像以上に暗い)
- 手袋(軍手でもOK。手が汚れると作業が雑になる)
- 携帯用エアゲージ(空気圧確認ができるだけで判断が早い)
- (可能なら)トルクレンチ:103N・mを“再現”するため
- ロードサービス連絡先のメモ(スマホ不調・圏外の保険)
この5つが揃うと、パンク対応のストレスが一気に減ります。
そして何より、「自分は備えている」という感覚が、運転そのものを軽くしてくれる。
スペアタイヤを選ぶか、応急修理で割り切るか——迷ったときの判断軸

ここ、読み手の“自分ごとスイッチ”が入るところです。
スペアタイヤって「付ける/付けない」の二択に見えて、実際はあなたの生活のリズムで答えが変わります。
だから僕はいつも、この章を書くときにワクワクします。だって、クルマの装備選びがそのまま“使い方の設計”になる瞬間だから。
結論はシンプル。
「止まりたくない人」はスペアタイヤ、「止まってもいいから荷室を取りたい人」は応急修理。
この考え方にすると、迷いが一気に減ります。
スペアタイヤ(メーカーOP)に向く人
スペアタイヤは、トラブルを“短時間で終わらせたい人”の装備です。こんな使い方なら相性がいい。
- 高速移動が多い/山間部が多い(判断と復帰の“速度”が要る)
- 家族同乗が多い(停車時間を短くしたい。安心の総量が増える)
- 補修液を使いたくない(タイヤ/ホイールを汚したくない、後処理を減らしたい)
応急修理キットで割り切れる人
応急修理キットは、“荷室を優先して、困ったら助けを呼ぶ”という割り切りができる人に強い。
- 街乗り中心でロードサービスを呼びやすい(止まる場所・助けが近い)
- 荷室を低床で使い切りたい(積載性優先。床下も含めて使い倒したい)
- パンク時は無理せず、プロに任せる前提(自分で作業しない“安全な判断”ができる)
どっちが偉い、じゃない。
あなたの使い方に合う方が、いちばん正しい。
ただし、ここだけは事実として押さえておきたい。
トヨタの注記が示す通り、スペアタイヤを選ぶと修理キット非装着になり、荷室は高床化します。
つまりこれは「安心を積む代わりに、荷室の使い方が変わる」選択。日常の使い勝手と、万一の復帰力を天秤にかける話です。
ここまで読んで「自分はどっちだろう?」が見えたなら、もう半分勝ち。
次は、その前提のまま“実際に困ったときどう動くか”を、さらに具体で詰めていきます。
FAQ
ここからは“検索で一番困ってるところ”を、テンポよく片づけます。
FAQって地味に見えるけど、実はここが一番ワクワクする。
なぜなら、答えを知った瞬間に不安が行動に変わるからです。あなたのプリウスが、急に“頼れる相棒”に戻ってきます。
Q1. 60プリウスにスペアタイヤは標準で付いてますか?
A. 少なくともPHEVの取説では、スペアタイヤ非搭載が明記されています。
ただし仕様は車両によって変わるので、注文書・装備表・取説の該当章で確認するのが最短ルートです(ここを押さえるだけで迷いが消えます)。
Q2. スペアタイヤを付けると荷室はどうなりますか?
A. トヨタの注記では、スペアタイヤ選択で応急修理キットが非装着になり、さらにラゲージトレイが低床→高床に変更されるとされています。
つまり「タイヤを足す」だけじゃなく、荷室の使い方(床下の思想)が一緒に切り替わります。ここを知って選べば、満足度が上がります。
Q3. プリウスのスペアタイヤ交換、締め付けトルクは?
A. 取説の記載は103N・m(1050kgf・cm)です。
この数字を知ってるだけで、交換作業は「感覚ゲー」から「再現できる作業」に変わります。
Q4. 応急用タイヤ(テンパー)で高速道路を走っていい?
A. 取説では、応急用タイヤ装着中は80km/h以上で走行しない注意が明記されています。
応急用タイヤは“帰るためのタイヤ”。スピードで勝負する装備じゃありません。
Q5. 応急修理キットの“応急”って、どれくらい?
A. 取説では応急修理は一時的な処置で、できるだけ早い修理・交換が求められています。
「直った!」ではなく「帰れる状態になった」と捉えると、次の判断が速くなります。
答えが揃ったら、あとは“前提に合った備え”をするだけ。
パンクは運。でも、対応はスキルです。
注意書き(必ず入れてください)
ここまで読んで「よし、いける」と思えたなら最高です。
でも同時に、ここだけは“ブレーキ役”としてしっかり置かせてください。
タイヤ交換・応急修理は、正しくやれば安全側に倒せる一方で、間違えると一気に危険側へ振れる作業です。
※本記事は一般的な情報提供です。作業は必ず車両の取扱説明書に記載された手順・警告に従ってください。
特に夜間・悪天候・高速道路・交通量の多い場所では、無理に作業を続けないこと。安全確保を最優先し、状況によってはロードサービスの利用を迷わず選んでください。
「自分でやる」より、「安全に帰る」。この優先順位だけは守ってほしい。
参考・引用(URL)
この記事は、できるだけ“伝聞”に寄せず、メーカー一次情報(取扱説明書・公式資料)を軸に組み立てました。
その上で、荷室の実態や使い勝手は第三者メディアの試乗記・実体験記事も参照し、読み手が「自分の生活に置き換えやすい」形にしています。
- トヨタ取扱説明書(PRIUS PHEV):パンクしたときは(スペアタイヤ非搭載・応急修理の前提)
- トヨタ取扱説明書(PRIUS PHEV):タイヤの交換(103N・m、工具非搭載の注記など)
- トヨタ取扱説明書(PRIUS HEV):パンクしたときは(応急用タイヤ装着車/80km/h制限など)
- トヨタ取扱説明書(PRIUS HEV):パンクしたときは(応急修理キット装着車/工具の注記)
- トヨタ公式:プリウス主要諸元表(注記:スペアタイヤはメーカーOP、選択時の高床化など)
- WebCG:トヨタ・プリウスZ試乗記(荷室床下に応急修理キット等の記述)
- Response:プリウスPHEV 実体験記事(ハイデッキ言及など)
上記ソースは、①PHEVの「スペアタイヤ非搭載」明記、②応急用タイヤの速度制限(80km/h)と交換時の安全手順、③ホイールナット締め付けトルク(103N・m)、④スペアタイヤを選ぶと応急修理キットが非装着になり荷室が低床→高床に変わる注記、⑤荷室床下の実例(試乗記)――といった「判断と安全」に直結するポイントの裏取りに使用しました。
知識は、慎重さとセットで“武器”になる。
このページが、あなたのプリウスの安心を一段上げるきっかけになれば嬉しいです。

