夜の国道、信号のない交差点。僕はジムニーのステアリングを、ためらいのない角度でほんの少しだけ切る。
その瞬間、車内の静けさに針を落とすように「カチ、カチ」。ウインカー音が、鼓動より少し先に鳴る。
試乗記を書いていた頃から、僕はこの音を何百回も聞いてきた。スポーツカーの硬質なクリック、ミニバンの控えめなビープ、輸入車の乾いたリズム──。でもジムニーのそれは、妙に“道具”として誠実だ。小さな合図を、ちゃんと合図として成立させるための音。
静かな車内ほど、音は心の輪郭をなぞる。疲れている日はうるさく感じ、集中している日は心地よく感じる。つまりウインカー音は、クルマの声であると同時に、運転者の心の状態を映す鏡でもある。
その“返事”を、あなたの好みに寄せたい。
ただし忘れたくないのは、ウインカーは趣味の小物じゃないということ。方向指示器は、点滅のリズムや作動の分かりやすさまで含めて基準が定められた、安全とルールのど真ん中にいる装備だ。音を整える話は、見た目のカスタムより先に「合図の責任」を連れてくる。
だからこの記事では、ジムニーのウインカー音を“好み”に寄せる前に、どこまでが触れていい領域で、どこからが危うい領域なのか──その境界線を、経験と仕組みの両方からほどいていく。
ジムニーのウインカー音は「部品の音」か「演出の音」か

ここ、実はめちゃくちゃ面白いところです。ウインカー音って「ただのカチカチ」じゃなくて、クルマの世代と思想が丸見えなんですよ。
昔のクルマの「カチカチ」は、ほんとに文字どおり。リレー(フラッシャーリレー)が物理的にON/OFFを繰り返す音で、いわば“機械が仕事してる音”でした。
ところが近年は電子制御化が進んで、点滅自体は電子的に作れる。すると何が起きるか。
本当は無音でも成立するのに、あえて音を鳴らす──つまり「演出としてのウインカー音」が登場します。これ、地味に革命です。
だからこそ「ウインカー音を変えたい」「もう少し小さくしたい」という感情が生まれる。音が“機械の副産物”ではなく、体験としてデザインできる要素になったからです。
マイクロピース:音を変える前に、まず「どこが鳴っているか」を知るだけで、不快は半分になる。
「好み」に寄せられる範囲は、音の出どころで決まる
いきなり結論からいきます。やるべき順番はこれです。
- 点滅を作っているのは誰?(リレー?電子制御?)
- 音を鳴らしているのは誰?(リレーの作動音?ブザー?スピーカー?)
この2つが分かるだけで、カスタムの難易度もリスクも一気に見通せます。
- リレー由来の機械音:構造によっては、リレー交換で音質が変わることがある(車種・構造次第)。
- 電子制御+スピーカー/ブザー:音はユニット側の“仕様”として鳴ることがあり、変更できる範囲は車種ごとに違う。
そしてジムニー(JB64/JB74)。ここがまた“沼”で、だから楽しい。
オーナーの整備記録を追っていくと、「メーター周辺から鳴っている」「メーター裏のスピーカーっぽいところ」など、音源が車内側にある前提で語られることが多いんです。
ただし、ここはメーカー公式として断定できる情報ではありません。だから記事としては、
- 断定はしない
- ユーザー事例として紹介する
- 「仕様確認が最優先」と釘を刺す
この三点セットが誠実で、結果的に読者の信頼も取れます。
……で、ここからが本番です。
音源のタイプが分かると、「どこまでなら好みに寄せられるか」が見えてくる。次の章では、ウインカーを触るときに絶対に外せない“車検と安全の線引き”を、いちばん分かりやすく整理します。
ウインカー周りを変える前に:車検(保安基準)と安全の線引き

ここ、地味に見えて実は一番ワクワクするパートです。なぜかというと、「何を変えていいか/ダメか」が分かった瞬間に、カスタムが“怖い作業”から“設計遊び”に変わるから。
ウインカー(方向指示器)は「他の交通に右左折や進路変更を示す」ための装備で、装備義務や基準が定められています。つまり、ここは趣味の世界でありながら、同時に公道という共通ルールの上に立っている。
でも安心してください。ルールはカスタムの敵じゃない。むしろ“やっていい範囲”を教えてくれる地図です。
点滅周期は「毎分60〜120回」の範囲
まず押さえるべき最重要ポイントが、点滅のリズム。
方向指示器は、一定周期で点滅することが求められ、その目安として毎分60回以上120回以下の基準が示されています。速すぎても遅すぎても、相手から見たときに合図の意味が薄れる。つまり“合図としての品質”が崩れるんです。
結論:音をいじる前に、まず「点滅(リズム)」を崩さないこと。ここがスタートライン。
この土台が守れれば、その先の“好み”の話が一気に前向きになります。
「確認できないなら、表示する」──合図は消えてはいけない
次に大事なのは、運転者が「今ウインカーが出ている」と確実に分かること。
もし運転席から方向指示器の作動状態を直接・容易に確認できない場合は、作動状態を運転者に表示する装置が求められます(メーターのインジケーター等)。
音を小さくする/別の音にする、という“好み”自体は否定されません。
でも、合図が合図として機能するために、確認性は必ず残す。ここだけは譲らないほうがいい。カスタムの満足度も、安全も、両方守れます。
マイクロピース:静かにしたい。でも消したくない。合図は、帰宅率を上げる装備だから。
ジムニーは「ウインカー=意思表示」を安全装備でも使っている
そして、ここがジムニーの面白いところ。
スズキの安全装備解説では、車線逸脱警報がウインカー作動中は車線変更の意図があると判断して一旦停止する旨が明記されています。
つまりウインカーは、周囲への合図であると同時に、クルマ自身の判断材料にもなっている。
「音を変えたい」という小さな入口から入ってきた話が、いつの間にか“運転というシステム全体”の話につながっていく。これが僕はたまらなく好きです。
だから次の章では、いよいよ現実的な話へ。LED化で起きがちなハイフラ、抵抗の熱、相性──。
ここを押さえると、ウインカー周りのカスタムは一気に“失敗しにくい”世界になります。
ウインカーをLED化すると何が起きる?(ハイフラ・熱・相性)

ここは、ウインカーカスタムの“面白いところ”と“怖いところ”が同居する章です。
LEDって聞くと、明るい・キレがいい・見た目が締まる──いいことだらけに見える。実際その通りなんですが、ウインカーに関しては「光」だけじゃなく「車の判断」まで変わることがあるんです。ここがハマりどころ。
ハイフラ(高速点滅)は「異常のサイン」として起きることがある
ウインカーをLED化すると、消費電力の違いなどで車両側が異常(球切れ相当)と判断し、点滅が速くなるケースがあります。これがいわゆるハイフラ。
これ、やってみると分かるんですが、初見だとちょっと焦ります。
「え、壊した?」「車検ダメ?」って頭をよぎる。だけど落ち着けば、正体はシンプルです。車が“ちゃんと異常を教えてくれている”だけなんですね。
そして面白いのはここから。ハイフラ対策として抵抗(キャンセラー)を使う手法が知られていますが、ここで主役になるのは“電気”よりも熱です。
抵抗(キャンセラー)は発熱する:取り付け場所の思想が必要
市販のハイフラ対策抵抗は、ウインカー作動中に抵抗本体が発熱することが明記されている製品もあります。さらに専門解説では、LEDウインカー用抵抗が150℃前後、あるいはそれ以上になることがある、とされています。
ここでテンションが上がるポイントは、「じゃあ熱をどう扱う?」がカスタムの勝負になるところ。
要するに、抵抗は“追加した部品”じゃなくて、熱を出す小さな発熱体として扱うべきなんです。
- 固定方法と周辺素材(樹脂や配線被覆)への配慮が必須
- 熱を逃がす設置思想(空気層、金属面、固定場所)が超重要
- 不安がある場合は、DIYよりも整備工場へ相談が安全
マイクロピース:LED化は、光だけじゃなく“リズム”まで変える。ハイフラはその警告灯。
ここまで読むと、「LED化=バルブ交換」じゃなくて、“点滅というシステムを組み替える”に近い、って感覚が掴めてくるはずです。
次のパートでは、ここまでの知識を踏まえて、ジムニーのウインカー音を“好み”に寄せるときの現実的なルートを、リスクの少ない順に整理していきます。
ジムニーのウインカー音を「好みに寄せる」現実的な3ルート

さあ、ここからがこの記事の“いちばん楽しいところ”です。
ウインカー音って、やみくもに触ると危ない。でも逆に、順番さえ守れば「ちゃんと安全を残しながら、ちゃんと好みに寄せる」が成立します。
僕がここでやりたいのは、無理やりDIYを煽ることじゃありません。
“仕組みを理解して、最短で気持ちよくなるルート”を、ちゃんと地図にして渡すこと。
なので、ここから先は“やり方”より考え方を優先して書きます。ウインカーは安全装備で、改変は保証や法令適合にも影響し得るから。
でも言い換えると、そこさえ理解していれば安心して遊べる領域でもある、ということです。
ルート1:まずは「設定・仕様」を確認する(いちばん安全)
最初にやるべきは、改造ではなく確認。ここをサボると、カスタムが“遠回り”になります。
理由はシンプル。
「ウインカー音だと思っていたものが別の音だった」──これ、現場で本当によくあります。
そして、もし設定で調整できるなら、それがいちばん安全で、いちばん確実で、いちばんコスパがいい。
- 取扱説明書や車両の設定項目に、音量やブザーに関する項目がないか
- ウインカー音ではなく、別の警告音(シートベルト等)と混同していないか
- 最近“音が変わった”なら、ソフトウェア更新や電装状態の変化がないか
ここを飛ばすと、あなたの時間も、ジムニーの健全性も、遠回りになる。
逆に言えば、ここを押さえた時点で、もう勝ちが見えてきます。
ルート2:「大きい/小さい」が“異常”の可能性もある
次は、テンションを上げる前に一回だけ冷静になるポイント。
次の条件に当てはまるなら、好みの問題ではなく点検推奨です。
- ウインカー音が突然変わった
- 点滅と音がズレる/左右で感覚が違う
- ハザード時だけ違和感が出る
- LED化後に症状が出始めた
なぜ慎重になるかというと、ウインカーは“周囲に伝える装置”で、故障は事故に直結しうるから。
ここでの判断が、あなたのジムニーを守ります。
マイクロピース:うるさいのは音じゃない。疲れた夜の、神経のほうかもしれない。
ちなみにこのルートは、悪い話じゃありません。
「変えたい」じゃなく「直すべき」だったと分かるだけで、ストレスは一気に減る。
そして直ったあとに、気持ちよく“好み”の話へ戻れます。
ルート3:どうしても“音質・音量”に触れたくなる人へ(注意喚起)
ここが最終ルート。いちばんワクワクするけど、いちばん慎重にいくべき場所です。
ユーザー事例として、メーター周辺の構造(スピーカー/穴/反響)に触れて、ウインカー音を小さく感じる方向へ調整した、という記録が見つかることがあります。
「なるほど、そこか!」って言いたくなる話も多い。
ただし、ここは保証・安全・車検・確実性のリスクが同居する領域です。
だからおすすめの結論はシンプルで、「相談→判断」の順番を守ること。
- ディーラー/整備工場に「ウインカー音の変更可否」を相談
- 音を下げる場合でも「作動確認(表示)」は確実に残す
- 電装加工は“戻せる状態”を前提に(痕跡が残る加工は慎重に)
このルートの良さは、ちゃんと踏めば“好み”と“安全”が両立できるところです。
無理に攻めるより、プロの視点を借りて、確実に気持ちいい着地点へ持っていく。
好みは、あなたのもの。
でも合図は、あなた一人のものじゃない。
──その境界線を越えない範囲で、寄せていこう。ここを守れた人だけが、いちばん気持ちよく満足できます。
結論:ウインカー音は“好み”の前に「合図」として残す

ここまで読んでくれた人なら、もう分かってきたはずです。
ウインカー音って「うるさい/静か」だけの話じゃない。仕組み・安全・ルール・そして自分の運転の癖まで一緒に見えてくる。
ジムニーのウインカー音が気になるのは、あなたが運転を丁寧に扱っている証拠だと思います。
雑に運転している人は、そもそも気にならない。気になるってことは、あなたの中に「もう少し気持ちよく運転したい」がある。そこが最高です。
だからこそ、音を整えるなら順番がすべて。
- ① 点滅(リズム)を守る:ここが崩れると、合図の意味が薄れる
- ② 確認性を残す:音でも表示でもいい。とにかく「今出てる」が分かること
- ③ 最後に好みへ寄せる:ここで初めて“気持ちいい”が安全に成立する
マイクロピース:ウインカー音を整えるのは、運転の所作を整えることに似ている。
そして最後に、いちばん現実的で強いアドバイスをひとつ。
迷ったら、販売店か整備工場へ。
「この年式・この仕様で、ウインカー音ってどこで鳴ってます? 変えると何が起きます?」
この一言を投げられるだけで、あなたのカスタムは一気に“安全で賢い方向”へ進みます。
その一歩は、あなたのジムニーを長く“いい相棒”にする最短距離になる。
音が整うと、運転が整う。すると不思議と、夜道まで少し楽しくなるんです。
FAQ
最後に、実際に検索されやすい「つまずきポイント」を一気に整理します。
ここだけ読んでも、ジムニーのウインカー音まわりの“地雷”はかなり避けられるはずです。
Q. ジムニーのウインカー音はどこから出ていますか?
A. まず大前提として、ウインカー音の“出どころ”は車種や年式、設計で変わります。昔はリレーの物理音がそのまま鳴っていましたが、近年は電子制御化で、ユニットが擬似音(ブザー/スピーカー)を鳴らす設計もあります。
ジムニー(JB64/JB74)については「メーター周辺から聞こえる」とするユーザー事例も見つかりますが、ここはメーカー仕様として断定できる情報ではありません。
なので最短ルートは、取扱説明書→販売店で確認です。これが一番早くて、一番安全で、失敗しません。
Q. ジムニーのウインカーをLED化したらハイフラになりますか?
A. なる場合があります。LEDは消費電力が小さいため、車両側が球切れ相当の“異常”と判断して高速点滅(ハイフラ)になるケースがあります。
逆に言うと、ハイフラは「壊れた」ではなく車がちゃんと反応しているサインでもあります。対策部品を使うかどうかは、車両側の仕組みや適合で決まるので、適合確認が最重要です。
Q. ハイフラ対策の抵抗はどれくらい熱くなりますか?
A. 製品説明で「発熱する」ことが明記されているものがあり、専門解説では150℃前後、あるいはそれ以上になることがあるとされています。
ここ、ウインカーカスタムで一番“ワクワクしながら慎重になる”ポイントです。
抵抗はただの部品ではなく、熱を出すものとして扱う必要があります。固定場所、周辺素材(樹脂や配線被覆)、熱の逃げ道まで含めて考えるのが安全です。自信がない場合は整備工場に任せるのが賢い選択です。
Q. 点滅速度を変えると車検に影響しますか?
A. 影響し得ます。方向指示器は毎分60〜120回の一定周期点滅が基準として示されています。この範囲を外れると適合性が問題になり得ます。
「音」だけを触っているつもりでも、結果として点滅のリズムが変わるとアウトになりやすい。だから記事内でも繰り返し言いましたが、リズムは最優先で守るのが鉄則です。
Q. ウインカー音が急に変わった時は故障ですか?
A. “好み”ではなく変化なら、点検の価値があります。具体的には、
- 点滅と音がズレる
- 左右で感覚が違う
- ハザード時だけ違和感が出る
- LED化後に症状が出始めた
このあたりがあれば、電装の状態確認をおすすめします。
不具合を先に潰しておくと、そのあとに“好みへ寄せる”作業が一気に気持ちよくなります。結局これが、いちばん満足度が高い順番です。
参考ソース
- スズキ公式:ジムニー 安全装備
- 国土交通省:細目告示 第137条(方向指示器)
- 国土交通省:道路運送車両の保安基準 第41条(方向指示器)
- 国土交通省:細目告示 第215条(作動状態の表示等)
- WEB CARTOP:ウインカーの「カチカチ音」解説
- Car Watch:スピーカー搭載で“電子リレー音”を出す例
- Valenti:ハイフラ対策抵抗の注意(発熱)
- DIY Labo:ハイフラ防止抵抗の温度と熱対策
※本記事は一般情報です。電装部品の変更は発熱・火災・誤作動のリスク、車両保証や法令適合への影響があり得ます。作業・改変は自己責任となるため、不安がある場合は販売店・整備工場へご相談ください。保安基準は改定されることがありますので、必ず最新情報をご確認ください。

