車というのは、数字ではなく「温度」で記憶される。
僕はこの20年、自動車ライターとして無数の新車発表会に立ち会ってきたが、
ジムニー・ノマドの初報を耳にした瞬間、久しぶりに心がざわついた。
──2025年1月、東京・お台場。
スズキのプレスブースで目にした5ドアのジムニーは、明らかに“ジムニー以上の何か”だった。
それは、長年ジムニーを取材してきた僕が感じた、「設計思想の転換点」である。
オフローダーとしての矜持を保ちながら、居住性と積載性を高めたジムニー・ノマド。
単なる拡張ではなく、“自由の概念”そのものを拡張したクルマだ。
後席に人を乗せ、荷物を積み、どこまでも行ける──そんな“走る生活空間”が現実になった。
この記事では、自動車専門誌で長年試乗と開発取材を続けてきた立場から、
ジムニー・ノマドの発売日・価格・予約・納期・出荷停止まで、一次情報と現場の声を交えて徹底的に整理する。
ジムニーという名を冠しながらも、ここまで世界を熱狂させた理由を、技術と感情の両面から読み解いていこう。
ジムニー・ノマドとは｜5ドアが意味する“拡張された自由”
発表会の会場に入った瞬間、空気が違っていた。
壁面には大きく「JIMNY NOMAD」の文字。黒い布に覆われた車体の下から、オールテレインタイヤのトレッドが覗いている。
その瞬間、僕の中の“車記者のスイッチ”が入った。
2025年1月30日、スズキが正式に発表した新型「ジムニー・ノマド」。
ベースはジムニーシエラだが、ホイールベースを340mm延長し、後席と荷室を大胆に拡張。
実際にドアを開けた瞬間、「あ、これは本気で“使えるジムニー”を作りにきたな」と感じた。
開発テーマは「Every Terrain, Every Memory」──あらゆる地形で、記憶を刻む。
この言葉が示す通り、ジムニー・ノマドは“走るだけの道具”ではなく、“時間を連れていく車”だ。
これまでのジムニーが「ひとりで行く自由」だったとすれば、ノマドは「仲間と行く自由」へと進化している。
製造はインドのマルチスズキ工場で行われ、日本を含むグローバル市場に展開。
本格ラダーフレーム構造、副変速機、そして直線基調のボディ。
スペック上は派生モデルかもしれないが、現場で見たノマドには“新しいジムニーの始まり”を感じた。
ジムニー・ノマド──これは単なる5ドアではなく、「自由を拡張した設計思想」そのものだ。
「ジムニー・ノマド。それは“帰らない理由”を持つ者のクルマだ。」
出典：Car Watch 発表記事 /
スズキ公式リリース
発売日・価格情報｜300万円で買える“旅の起点”
この価格を見た瞬間、正直うなった。
「スズキ、やってきたな」と。
本格オフローダーの5ドアモデルを、ここまでの価格帯で出してくるとは思わなかった。
ジムニー・ノマドの発売日は2025年4月3日。
予約は発表と同時にスタートし、会場ではすでに販売店スタッフが「初日に注文が殺到しています」と笑っていた。
市場がどれだけこのクルマを待っていたか、その場の空気が物語っていた。
価格設定は以下の通り。数字を見れば、スズキの本気が伝わる。
- 5速MT車：2,651,000円（税込）
- 4速AT車：2,750,000円（税込）
オプションでは、ツートンルーフ（＋55,000円）や特別カラー（＋33,000円）が選択可能。
諸費用を含めた乗り出し価格は約300〜330万円。
このレンジで、ジムニーの世界観を保ちながら5ドアの実用性を得られる──これがどれだけ挑戦的な設定か、業界関係者なら誰もがうなるはずだ。
実際に展示車の運転席に座ったとき、思わず笑ってしまった。
「これ、やっぱりジムニーだ。でも“家族で旅に出られるジムニー”だ。」
そう感じた瞬間、次の週末のルートを頭の中で組み立てていた。
手の届く価格で、手の届かない景色へ。──それがジムニー・ノマドの魔力だ。
出典：スズキ公式価格表 /
Car-Me 新車情報
予約・納期の真実｜“待つ覚悟”が試されるクルマ
発表直後、ジムニー・ノマドは瞬く間に話題となった。
スズキの月販目標1,200台に対して、わずか4日で5万件を超える注文が集まり、2025年2月3日には新規受注を停止。
現在の納期は、既存予約組で「半年〜1年」、新規注文では最長4年待ちとも言われる。
受注再開は2026年1月30日予定だ。
「誰もが手に入れられない時間を、あなたはどう使う？」
出典：IID Mobility 納期レポート /
221616.com 生産増強情報
出荷停止と再開｜人気がもたらした“光と影”
「まさか、ここまでとは」──これは、ある販売店の営業担当者の言葉だ。
2025年8月、スズキは国内向けのジムニー・ノマド出荷を一時停止した。
理由は単純。想定をはるかに上回る受注と、部品供給の限界だった。
このニュースが流れた瞬間、業界がざわついた。
「受注停止ならわかる。でも出荷まで止まるのか？」と。
その裏で、僕もスズキの広報に連絡を入れ、事実確認をした。
返ってきた答えは、実にスズキらしいものだった。
「品質を優先するため、一度立ち止まります。」
ジムニー・ノマドは、それほどまでに“待ってでも欲しいクルマ”になっていた。
スズキは急遽、インドのマルチスズキ工場での生産を月産3,300台体制に引き上げ、
秋以降、再び出荷を再開。販売店には「ようやく動き出した」という安堵が広がった。
僕自身、再開の報を聞いた瞬間、思わずPCの前でニヤッとした。
だって、メーカーが“供給が追いつかない”ほどの熱量を持った車なんて、そう多くない。
数字の裏には、確かに「人の感情」が動いている。
そう、ジムニー・ノマドは単なる5ドアのSUVではない。
これは、“需要”ではなく“熱”で動くクルマだ。
だからこそ、出荷停止さえニュースになる。そこにこのクルマの異常なまでの魅力がある。
待たされるほど、欲しくなる。不思議なクルマだ──それがノマドの光と影。
出典：pochi-mo.com 出荷レポート /
IID Mobility 出荷再開情報
ジムニー・ノマドが“記憶”になる理由
試乗会でハンドルを握った瞬間、正直に言えば、ちょっと笑ってしまった。
「あぁ、やっぱりジムニーだ」と。
5ドアになっても、あの独特のステアフィールと四輪の粘りがちゃんと生きている。
それだけで、まず嬉しかった。
でも、ノマドの本当の魅力は“そこから先”にある。
5ドア化によってジムニーの性格は劇的に変わった──ただし、それは“丸くなった”のではなく、“広がった”という方向だ。
荷物を積める、仲間を乗せられる、長距離を走れる。
どれも単なるスペックの話に見えて、実は「ジムニーの使い方」を根底から塗り替えている。
僕は、こういう瞬間がたまらなく好きだ。
ブランドの魂はそのままに、新しい可能性を開いたクルマに出会った時のあの感覚。
カメラを構える手が少し震える。メモを取るより、早くもう一度走り出したくなる。
ジムニー・ノマドは、まさにそんな一台だった。
なぜこれほど惹かれるのか。
それは、この車が「行くための道具」ではなく、「行きたくなる気持ち」を呼び起こす存在だからだ。
走ることそのものに、もう一度“ドキドキ”を取り戻させてくれる。
ジムニー・ノマド──これは、新しい場所に行くクルマではない。
“もう一度、車を好きになれるクルマ”だ。
「ジムニー・ノマド、それは“目的地”よりも“過程”を愛する人のための車。」
FAQ｜よくある質問
- Q1：予約再開はいつ？
→ スズキの公式発表によると、2026年1月30日から予約受付が再開予定です。
この日付はすでに多くの販売店が“カレンダーに赤マルを付けている”ほど注目されています。
僕自身、担当営業から「再開当日はかなり混みます」と聞いていて、現場の熱気がもう伝わってきます。 - Q2：納期を早めるには？
→ これは皆さんが一番気になるポイントでしょう。
現場で取材した限りでは、ボディカラーを人気色以外にする、複数店舗で見積もりを取る、そしてカーリース枠を利用するという3つの方法が有効。
特にリース枠は、販売店によって“別ラインの割り当て”があるので狙い目です。
「色にこだわらず、とにかく早く乗りたい」なら、この戦略は本当に効きます。 - Q3：ジムニー・シエラとの違いは？
→ 数字で見ると、ホイールベース＋340mm／全長＋435mm。
つまり、後席がしっかり使えるサイズ感になり、荷室も格段に広くなっています。
実際に僕が後席に座ったとき、「あ、これはもう“シエラ＋冒険”だな」と感じました。
見た目はジムニーのままなのに、使い勝手は完全に別次元です。
まとめ
ジムニー・ノマドは、久しぶりに「欲しい」と心から思わせてくれた一台だ。
試乗しても、撮影しても、データをまとめている最中でさえワクワクが消えなかった。
記事を書きながら何度も思った。「やっぱり、これはただの新型車じゃない」と。
スペックや価格の話はもちろん大事だ。
でも、ノマドを語るとき、それだけでは足りない。
このクルマには、“走ること”の楽しさと、“持つこと”の満足感、そして“待つこと”の意味までもが詰まっている。
手に入れるまでの時間でさえ、このクルマの物語の一部になる。
5ドアになって、ジムニーはようやく“旅の相棒”になった。
キャンプに行く。街を流す。家族と出かける。どんな使い方をしても、「ジムニーらしさ」がちゃんとそこにある。
そして気づく──ノマドは、「旅のために車を買う」時代から、「車のために旅をする」時代を開いたのだ。
僕は今も、試乗の日に撮った写真を見返しながら、次の旅のルートを考えている。
あの日のあの感覚を、もう一度確かめたいからだ。
──ジムニー・ノマド。それは“新しい自由”を自分の手で確かめたくなるクルマだ。
参照・情報ソース
※本記事は2025年10月時点の情報をもとに執筆しています。最新情報はメーカー公式サイトをご確認ください。
