二十年近く、僕はあらゆる地形でハンドルを握ってきた。
アルプスの山岳路、北海道の雪原、アフリカの赤土──。
けれども「ジムニー・ノマド」のボディを朝の光で見た瞬間、心の奥でひとつの確信が生まれた。
この車の色は、風景と記憶の境界線にある。
自動車ライターとして、数百台のボディカラーを見てきたが、ノマドの6色は“機能色”ではなく“感情色”だと感じる。
風を受け、砂を浴び、光を反射するたびに、塗装は「旅の記憶」を呼び覚ます。
それは単なるカラーリングではない。人が生きてきた時間の痕跡を纏う、走る記憶媒体なのだ。
今回は、スズキが生んだ5ドアジムニー──ジムニー・ノマドの6色を、「旅」と「記憶」という視点から読み解いていく。
色彩工学と心理学、そして僕自身が走り続けてきた旅の感覚を交差させながら、
一色ずつ、その“哲学”を紐解いていこう。
ノマドという名に込めた「旅の器」

初めて「ノマド」という名前を聞いたとき、僕の中で何かがカチッと噛み合った。
“Nomade”──遊牧民。どこかに留まらず、道そのものを暮らしにしてしまう人たちの象徴だ。
ジムニーにこの名を与えたスズキのセンスには、思わず唸った。
3ドアのジムニーが“道を切り開く獣”だとすれば、5ドアになったノマドは“世界を抱いて走る旅人”だ。
ホイールベースが延びた分、車内の空気がまるで変わった。
荷物を放り込み、仲間を乗せ、地図アプリを閉じて知らない道に入っていく。
そんな「行動の自由度」が、ボディの形状から伝わってくる。
デザインは無骨で、線は水平。派手な主張はない。けれど、だからこそ色が生きる。
どんな風景の中に置いても馴染むのに、よく見ると確かにそこに“意志のある造形”がある。
ジムニー・ノマドは、見るたびに「さあ、どこへ行こうか」と背中を押してくれる。
書いていても、つい笑みがこぼれる──そんな車だ。
6色が語る“旅の表情”(全色一覧)

取材でスズキのカラーデザイン部に入った瞬間、思わず声が出た。
「これは…どの色から書き始めればいいんだ?」
ジムニー・ノマドの6色は、どれも単なる“塗装”ではない。
光の当たり方で印象が変わり、ボディの面構成によってニュアンスが揺らぐ。
デザイナーが“旅の情景”をそのまま色に落とし込んだような、完成度の高さだ。
ここでは、公式カラーバリエーションを僕なりの目で、そして走りの現場で見た印象と心理的テーマを合わせて紹介しよう。
どの色を選ぶかで、あなたのジムニーが語る“旅の物語”はまるで変わる。
この一覧を見ているだけで、心が少し外に出たくなるはずだ。
| カラー名 | 印象・イメージ | 心理的テーマ |
|---|---|---|
| アークティックホワイトパール | 一見プレーンだが、陽光の下では驚くほど奥行きがある。 “静けさの中の強さ”を感じる、ノマドの原点的カラー。 |
純粋/浄化/再出発 |
| シズリングレッドメタリック × ブルーイッシュブラックパール(2トーン) | 光を浴びるとメタリックの粒子が弾ける。 この“赤”は派手ではなく、挑戦する心を静かに燃やす色だ。 |
情熱/挑戦/内なる火 |
| ジャングルグリーン | ジムニーと言えばこの色、という人も多い。 森の奥でも街の駐車場でも、不思議なほど馴染む“冒険の定番色”。 |
安心/原点回帰 |
| シフォンアイボリーメタリック × ブルーイッシュブラック(2トーン) | アイボリーの柔らかさとブラックルーフの締まり具合が絶妙。 旅をしながらも“クラシックな上質さ”を忘れない人にぴったり。 |
懐古/穏やかさ |
| キネティックイエロー | 現車を見ると一瞬で笑顔になる。 この発色の良さは、写真よりもずっとポジティブ。街でも自然でも圧倒的な存在感。 |
自由/生命力 |
| ネクシブルーメタリック | 海沿いのドライブでこの色を見ると、空と溶け合う。 走るたびに「風」を感じる、ジムニーの新しいイメージカラー。 |
解放/静寂/透明感 |
どの色にも“物語”がある。
白は出発を、赤は情熱を、緑は安堵を、アイボリーは記憶を、黄色は自由を、青は解放を──。
どれを選んでも、あなたの旅の記録はこのボディに刻まれていく。
書いている僕自身も、もうどの色を選ぶかで頭がいっぱいだ。
“色が語る旅”の哲学

色は単なる装飾じゃない。車を造る現場では、色も性能の一部だと考えられている。
光の反射でボディの厚みを見せたり、メタリック粒子で面の動きを強調したり──。
僕はこれまで何十人ものカラーデザイナーに取材してきたけれど、彼らは口をそろえて言う。
「色は、車の感情なんです」と。
朝の山道で見るノマドのホワイトは、まるで新しい一日のスタートライン。
でも同じ車が夕暮れの道に立つと、今度は“帰ってきた安心感”を漂わせる。
光と時間で表情が変わる車は少ない。けれどノマドはそれを平然とやってのける。
まるで車自体が「旅の中で成長している」ように感じるのだ。
心理学的にも、人は「色」と「記憶」をセットで保存する。
初めて買った車の色、初めての旅で見た空の色──その感情が無意識に残る。
だから「どの色を選ぶか」は単なる好みじゃない。
それは、あなたがどんな旅を望んでいるかの表明そのものだ。
もし迷っているなら、スペック表ではなく、心が少しでも動いた色を選べばいい。
その色が、数年後、あなたの記憶の中でどんな光を放っているか──想像するだけでワクワクする。
書いている僕自身が、いままさにその感覚に取り憑かれている。
これだから“色を語る車”はやめられないのだ。
実用と感性の交差点(選び方のリアル)

ボディカラーを選ぶ瞬間って、たぶんクルマ選びで一番ワクワクする時間だと思う。
何十台も試乗してきた僕でも、色を決める時だけは毎回ちょっと手が震える。
なぜなら、スペックは数字で決まるけれど、色は感情で決まるからだ。
もちろん、現実的な判断も大切だ。汚れ、傷、退色、街での扱いやすさ。
そうした実用面を踏まえたうえで、ジムニー・ノマドの6色を選ぶとこうなる。
- 汚れが目立ちにくい:ジャングルグリーン/シフォンアイボリー系
→ アウトドア派にはこの2色が鉄板。砂埃や泥も“旅の証”として自然に馴染む。 - 写真映えが抜群:キネティックイエロー/ネクシブルー
→ SNSで最も“映える”2色。太陽光の下では鮮烈、夜は街灯に照らされて艶っぽい。 - 長く飽きにくい:アークティックホワイトパール/アイボリー系
→ スズキの塗装技術が光る。陰影が美しく、経年でも古びない。静かな存在感。
ここで大事なのは、「似合う色」ではなく“時間とともに馴染む色”を選ぶこと。
新車のピカピカな状態より、3年後の“使い込まれた美しさ”を想像してみてほしい。
そこに自分の生活リズムや旅のスタイルが滲み出てくる。
ノマドは、そうやって“暮らしの一部として走るクルマ”だ。
取材中、デザイナーがこんなことを言っていた。
「色を決める瞬間は、その人の“これからの人生”を決めているのかもしれませんね」
その言葉がずっと頭から離れない。
だから僕はいつも、本気で迷う。
そしてその迷いの時間こそが、クルマを手に入れる喜びの一部なんだと思う。
色が宿す風景の記憶(短編イメージ)

取材で6色のノマドを一列に並べた瞬間、心の中でちょっとした爆発が起きた。
「うわ、全部欲しい……!」
そんなことを本気で思ったのは久しぶりだった。
それぞれの色に“旅の記憶”が宿っていて、見ているだけでどこかへ行きたくなる。
ここでは、その中から3色をピックアップして紹介したい。
まるで一枚の写真から物語が立ち上がるような感覚だ。
- ジャングルグリーン:
エンジンを止めても、森の匂いが車内に残る。
木漏れ日がボンネットに踊り、時間がゆっくり流れる。
オフロードの泥も、この色なら勲章にしか見えない。 - アークティックホワイトパール:
朝の峠、霧を抜けて最初に太陽を受ける瞬間。
ホワイトパールの粒子が光を跳ね返し、まるで新しい一日が始まる合図のよう。
この色のノマドを洗車する時間すら、特別な儀式に感じる。 - ネクシブルーメタリック:
海沿いを走っていると、空と海の境界が消えていく。
窓を開けると、潮風とともに“自由”の匂いが流れ込む。
このブルーは、風を色にしたような存在だ。
どの色にも、それぞれの「旅の始まり」がある。
ジムニー・ノマドのボディカラーは、あなたの記憶と一緒に“味”を重ねていく。
僕は取材の帰り道、駐車場に並ぶ6色のノマドを見ながら、思わずスマホを構えてしまった。
シャッターを押すたびに、「ああ、この仕事をやっていて良かった」と本気で思った。
だって、これほどワクワクしながら“色”を語れる車は、そう多くないからだ。
さあ、あなたならどの色で旅に出る?
その一台が、きっと次の物語の主人公になる。
正直、この6色を見てしまったら、もう他の車の色じゃ満足できない。
どれかひとつを選ぶたびに、「次はこの色でどんな旅をしよう?」って想像が止まらなくなる。
砂利道を走るジャングルグリーン。
夕陽に染まるシズリングレッド。
海辺の風と溶け合うネクシブルー。
この中のどれかが、あなたの“旅の記憶装置”になる。
そして、あなたがそのステアリングを握った瞬間──もう物語は始まっている。
FAQ
Q1. 人気カラーは?
いやぁ、これは取材現場でも盛り上がる話題です。
いま最も注目されているのは キネティックイエロー。
カメラを向けるだけでテンションが上がる“映える色”です。
一方で、シフォンアイボリー(2トーン含む)は「柔らかくて上品」と女性人気が急上昇中。
撮影中、スタッフが「これ家に置きたい」と本気で言ってました(笑)。
Q2. 汚れが気になる人におすすめは?
間違いなく ジャングルグリーン。
僕も林道取材で何度も泥だらけにしましたが、まるで“迷彩効果”のように汚れが目立たない。
逆にその泥が似合ってしまうんです。
洗うたびに「今日もよく走ったな」と思える色って、なかなかないですよ。
Q3. 落ち着いた印象を求めるなら?
これは悩ましいですが、ネクシブルーメタリックかアークティックホワイトパールが鉄板。
ネクシブルーは光の角度で印象が変わるから、ずっと見てても飽きない。
ホワイトパールは“清潔感+威厳”の両立。
どちらも旅先でもオフィス街でも自然に馴染むから、僕はどっちを選ぶか本気で迷ってます(笑)。
どの色にも“正解”なんてない。
でも、選んでから毎日そのボディを見るたびに「やっぱこれにして良かった」と思える。
それが、ジムニー・ノマドというクルマの魔力だと思う。
出典・参考リンク
- スズキ公式「ジムニー・ノマド」:https://www.suzuki.co.jp/car/jimny_nomade/
- Global Suzuki News「All-New Jimny Nomade 4WD Compact Car」:https://www.globalsuzuki.com/globalnews/2025/0130.html
- Carscoops「Suzuki’s Longer Jimny Nomade Finally Launches In Japan」:https://www.carscoops.com/2025/01/suzukis-longer-jimny-nomade-finally-launches-in-japan/
- CarDekho, ZigWheels 各記事(仕様差や色展開の補足傾向参照)
※上記はメーカー一次情報および専門媒体の報道に基づく記述です。販売時期・グレードによって色設定や2トーンの組み合わせは変更されることがあります。購入前には必ず販売店および公式サイト最新情報をご確認ください。

