ジムニー・ノマドの金属がわずかに軋む音。その響きに、長年テストコースで聞き慣れた“本物のメカ”の匂いを感じる。
5ドア化──それは単なる構造変更ではなく、「使うためのジムニー」から「暮らすためのジムニー」への進化だ。
僕はこれまで20年以上、開発現場や試乗取材で数百台のSUVを見てきたが、ノマドほど“道具の思想”と“生活のリアル”が交差したモデルは稀だ。
この記事では、そんなジムニー・ノマドを“旅と実用”の視点から掘り下げていく。
カスタムの正解、車中泊の最適解──そのすべてを、実際に現場で感じた温度と共にお伝えしたい。
ジムニー・ノマドとは?

| 全長 | 3,890mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,645mm |
| 全高 | 1,725mm |
| ホイールベース | 2,590mm |
| 排気量 | 1,462cc(K15B型) |
| 最高出力 | 102PS/6,000rpm |
| 駆動方式 | パートタイム4WD |
| 価格 | 2,651,000円〜 |
| 乗車定員 | 4名 |
このスペック表を見ただけで、もうワクワクしている人は多いはずだ。
そう、ついにジムニーが“5ドア”になった。しかも中途半端な拡張ではなく、悪路性能もデザイン哲学も丸ごと引き継いだまま、実用性を一気に引き上げてきた。
全長3.9メートル。数字だけ見るとコンパクトに思えるが、ホイールベースを2,590mmに伸ばしたことで後席と荷室の居住性が劇的に向上している。実際に後ろのドアを開けて座ると、「これなら家族でもキャンプに行ける」と誰もが感じるだろう。
エンジンはおなじみのK15B型、1.5リッター自然吸気。出力102PSという数値よりも、その“粘り”がジムニーらしい。トルクをしっかり感じながら、悪路も街も同じように踏み出せる。
僕はこのノマドを最初に試乗したとき、思わず笑ってしまった。
「これは、遊びと生活の境界を完全に壊しにきたな」と。
ジムニー・ノマドは、まさに“旅する4人のためのクロカン”。
道具としての完成度と、人生の余白を広げる自由さ。その両方を手に入れたスズキの回答だ。
外装カスタムおすすめ(見た目と機能の両立)

正直、ここからが一番楽しい。ノマドの魅力は“育てる楽しさ”にある。
見た目を変えるだけじゃない。パーツをひとつ加えるごとに、走りのキャラクターが変わっていく。
僕も取材車を前に、あれこれ妄想しているうちに気づけば工具を手にしていた。
- APIO ROADWIN サスペンションキット:
ジムニーの聖地・アピオが手がける定番リフトアップ。わずか1インチのアップでも、悪路での走破感がまるで違う。車検対応なのも嬉しいポイント。乗り心地はむしろ“しなやか”になる。 - JAOS BATTLEZ セット:
林道を攻めても、街を流しても快適。減衰力調整式ダンパーでシーンに合わせた足まわりを作れる。走りながらセッティングを変える時間が、もう楽しくて仕方ない。 - オフロードタイヤ(BFGoodrich KO2/TOYO OPEN COUNTRY):
この一本で“ジムニーらしさ”が完成する。ホイールアーチいっぱいにタイヤを収めた瞬間、思わず写真を撮りたくなる。グリップ力も抜群で、砂利道でも不安ゼロ。 - ルーフラック(FRONTRUNNER スリムラインII):
見た目が締まるだけでなく、テントもボックスも積める万能ギア。ライトバーを組み合わせれば、夜のキャンプサイトが一気に“自分の基地”になる。 - 防錆+マッドガード:
雨、雪、泥。ノマドで遊ぶなら避けて通れない敵だ。防錆コートをしてマッドガードを付ければ、下まわりも長持ち。スズキ純正でも十分効果あり。
どのパーツも、“やりすぎないカスタム”がキーポイント。
ジムニー・ノマドは、手を加えるほどに自分の性格が映し出されるクルマだ。
次の週末、あなたはまずどこから手を入れますか?
内装カスタム・収納・快適化

ジムニー・ノマドの室内は、カスタムの自由度が高い。だから面白い。
走る楽しさもあるけれど、荷室をどう使うかを考える時間こそ、このクルマの醍醐味だ。
僕自身、取材車の中でベッドを組みながら「この空間、想像以上に遊べるぞ」とニヤけてしまった。
- OGUshow フラットベッドキット:
約1,700mmのフラットスペースを確保。マットを敷けば大人2人が余裕で横になれる。取り付け精度が高く、走行中のガタつきもなし。組んだ瞬間に「これはもう動くリビングだ」と感じる。 - Field Style ラゲッジボード:
荷室下を収納スペースとして使える定番アイテム。キャンプ道具や電源を“隠すように積む”ことができる。フラットな天板は作業台としても優秀で、コーヒーを淹れるのにちょうどいい高さ。 - クラッツィオ/Bellezza シートカバー:
防水性とフィット感を両立。アウトドア後の泥汚れもサッと拭ける。クラッツィオは質実剛健、Bellezzaはデザイン重視。どちらを選んでも“自分の部屋感”が一気に増す。 - マルチ収納ネット/ラバーマット:
細かいギア類やコード類を整理するならこれ。天井やシートバックに取り付けるだけで使い勝手が段違い。ラバーマットは雨の日や泥道帰りに必須、ノマドを汚れから守ってくれる。
どれも“大げさな改造”ではない。けれど、これらを組み合わせると車内が驚くほど変わる。
走るだけの空間が、休む・積む・語るための空間に変わる瞬間──それを体験したとき、きっとあなたもジムニー・ノマドの虜になる。
電装・照明カスタム

ここからは、ジムニー・ノマドを“走るアウトドアベース”に変えるパートだ。
電気を整え、光を操るだけで、クルマの中が一気に別世界になる。
このあたりのカスタムは、正直めちゃくちゃ楽しい。配線を通しながら、未来の夜を想像してワクワクしてくる。
- ポータブル電源(Jackery/BLUETTI):
400〜1000Whクラスがベスト。キャンプライト、スマホ、カメラ、ノートPCまで全部まかなえる。AC電源があるだけで“外なのに家”みたいな安心感が手に入る。僕は取材の撮影機材を充電しながらお湯を沸かすのが定番だ。 - サブバッテリー+走行充電器:
長期滞在派にはこちら。走るだけで自動的に充電されるので、電気を気にせず夜を楽しめる。冷蔵庫を積んでもOK。DIY派ならこの配線を組む時間すらワクワクするはず。 - LEDランタン/マグネット式ライトバー:
照明を変えると、車内の雰囲気がガラッと変わる。暖色のLEDを天井に貼るだけで、夜がぐっと落ち着く。マグネット式なら脱着も一瞬。外に持ち出して焚き火サイトを照らすのも最高だ。
ポイントは、“使いやすさ”と“雰囲気”のバランス。
実用だけを追うと味気ないし、見た目だけだと使い勝手が悪い。
でも、このノマドならその両方が楽しめる。
電気を通した瞬間、あなたのジムニーが“動く秘密基地”に変わる。
車中泊アレンジ完全ガイド

さあ、ここからが本番だ。
ジムニー・ノマドでの“車中泊アレンジ”は、まるで自分だけの秘密基地を作るような感覚。
僕も取材のたびに、荷室を組み替えながら「あ、これ最高だな」とつぶやいてしまう。
寝る・食べる・くつろぐ──そのすべてをこのコンパクトな空間で完結できるのがノマドの魅力だ。
| 荷室奥行 | 約1,700mm(後席倒し時) |
|---|---|
| 荷室幅 | 約1,300mm |
| 天井高 | 約1,000mm |
数字で見ると小さく感じるかもしれないが、実際に寝転んでみると想像以上に広い。
「本当にこのサイズで寝られるの?」と思っていた人も、一度ベッドを展開すれば考えが変わるはずだ。
小さなボディの中に、“ちょうどいい自由”が詰まっている。
- マット+断熱シート:
厚み5cm前後のエアマットがベスト。床面の段差を吸収してくれて、朝までぐっすり眠れる。断熱シートを下に敷くだけで冬でも驚くほど快適になる。 - 遮光カーテン/網戸ネット:
プライバシー確保と虫対策の必需品。遮光カーテンで車内が“自分の部屋”になる。夏場は網戸ネットを少し開けて風を通せば、夜の涼しさをそのまま味わえる。 - 除湿剤+換気:
車中泊ビギナーが意外と見落とすのがここ。窓を少し開けておくだけで結露が激減する。小さな除湿剤をドアポケットに入れておくと翌朝の快適さがまるで違う。
僕が最初にノマドで車中泊した夜、目が覚めたら窓の外に朝霧が広がっていた。
その瞬間、「ああ、これがノマドの世界か」と思った。
荷室を寝床に変える、それだけのことがこんなにも楽しいなんて──。
次の休み、あなたもぜひ“動く部屋づくり”を始めてほしい。
人気カスタムブランド一覧

ノマドを手に入れたら、次に気になるのが“どこでパーツを選ぶか”。
この世界には、ジムニーを知り尽くした匠たちがいる。
それぞれに個性と哲学があって、選ぶ過程そのものがもう楽しい。
僕も取材で彼らの工房を訪ねるたび、「あぁ、やっぱりジムニーって文化なんだな」と感じる。
| ブランド | 特徴 |
|---|---|
| APIO | 言わずと知れたジムニー専門ブランド。 走行テストの量が桁違いで、どのパーツも“現場で鍛えられた確かさ”がある。 実際に乗ると、ステアリングの一発目で違いがわかるレベル。 初めてのカスタムにもおすすめ。 |
| JAOS | オフロードとデザインの両立を極めた老舗。 リフトアップ、バンパー、ホイール――どれも高品質で長持ち。 「見た目も走りも妥協しない」派ならここ。 実際、開発陣のこだわりを聞くと、熱量に引き込まれる。 |
| OGUshow | 車中泊仕様を考えるならここが本命。 ベッドキットや収納ユニットの精度はプロキャンパー級。 僕も実際に使ってみて、寝心地の違いに驚いた。 “旅するジムニー”を作りたいなら間違いない。 |
| スズキ純正アクセサリー | 迷ったらここ。メーカー保証付きで安心、品質も高い。 フロアマットやルーフラックなど、ベースを整えるのに最適。 カスタム初心者でも扱いやすく、「まずここから始めよう」と言いたくなるラインアップだ。 |
ブランドを眺めているだけでも、もう次の休日の予定が浮かんでくる。
「次はこのパーツを試そう」「あの組み合わせ、絶対かっこいいぞ」――そんな妄想が止まらない。
ジムニー・ノマドは、パーツを選ぶ時間まで楽しいクルマだ。
安全に楽しむための心得

ジムニー・ノマドで遊ぶときに大事なのは、ただ「走ること」じゃない。
“安心して楽しめる環境”を自分でつくることだ。
これは僕が全国を取材しながら、何度も感じたことでもある。
ほんの少し意識を変えるだけで、旅の自由度は一気に広がる。
- 重い荷物は中央に積む:
走行バランスを保つ基本中の基本。荷室の奥に詰めすぎるとリアが沈んで、ブレーキの効きが変わる。
ちょっとした積み方の工夫で、走りの安心感がまるで違う。 - 車内換気を忘れずに:
車中泊中はCO₂センサー付きのファンがあると安心。
冬場の締め切りは危険なので、1cmでもいいから窓を開けよう。僕も寒冷地取材では常にこれを徹底している。 - 照明マナーを守る:
明るいLEDランタンも便利だが、キャンプ場では光の向きに気を配りたい。
周りの静けさを壊さないことが“本当のアウトドア上級者”への第一歩だ。 - 非常時の備えとしても活用:
ポータブル電源と食料を積んでおけば、ノマドはそのまま避難車両になる。
「遊びの準備」が「防災の備え」になる。これがこの車の頼もしさだ。
僕は何度もジムニーで道なき道を走ったが、どんな状況でもこの基本を守っていれば怖くない。
安全に遊ぶことは、自由に遊ぶことと同義だ。
そう思える瞬間が、このクルマの本当の魅力だと思う。
ジムニー・ノマドは、走るほどに「居場所」を増やすクルマだ。
その居場所を守るのは、あなたのちょっとした意識と工夫だ。
FAQ
記事をここまで読んでくれた方から、よくもらう質問をまとめました。
どれも“気になるけど聞きづらい”リアルな疑問。ひとつずつ、現場の感覚で答えていきます。
Q1:大人2人で寝られる?
→ もちろん可能。荷室長は約1.7m、エアマットを敷けば余裕で眠れます。
実際に僕も取材で2泊3日こもったことがありますが、まったく問題なし。むしろ“寝袋の中で星を見られる”という贅沢付きです。
Q2:リフトアップは何cmまでOK?
→ 基本は40mm以内なら車検対応。
ただ、僕のおすすめは30mm前後。見た目の迫力と走行安定性のバランスがちょうどいい。
リフトアップした瞬間、「お、俺のノマドになったな」と感じるはずです。
Q3:電源DIYは可能?
→ できます。むしろやってみると楽しい。
ヒューズ付き配線で安全を確保すれば、難しくない作業です。
自分で組んだ電源が夜にちゃんと点いたときの達成感、あれはクセになります。
Q4:純正と社外シートカバーの違いは?
→ 純正は“安心と精度”、社外は“遊びと個性”。
クラッツィオやBellezzaあたりはフィット感も良く、防水性も高い。
僕は取材車に社外カバーを付けた瞬間、「もう一段階ノマドになったな」と感じたくらいです。
こうして質問を並べているだけでも、ノマドの奥深さにワクワクしてくる。
クルマを“乗るもの”じゃなく“作るもの”として楽しむ──その入り口が、このFAQなのかもしれません。
参考・出典
この記事を書くにあたって、公式情報から現場取材まで徹底的にチェックしました。
「ジムニー・ノマドをこれから手に入れる人が、最初の一歩を踏み出しやすくなるように」──そんな思いでまとめています。
- スズキ公式プレスリリース:公式スペック・発売情報
- Goo-net カタログ:モデル概要と価格
- Polarstar Cars:サイズ比較:3ドアとの実測差
- APIO公式:カスタムパーツ・リフトアップ情報
- JAOS公式:外装カスタム・サスペンション情報
ここまで読んでくれたあなたは、もう「ノマドの扉」を開けかけています。
この記事を書きながら、僕自身も何度も“次はあれを付けよう”“この仕様で旅に出たい”と手が止まりませんでした。
このクルマには、それだけの魔力があります。
ジムニー・ノマドは、ただの5ドアSUVではない。
自分の手でカスタムし、使いこなすことで完成していく「進化する相棒」です。
あなたのノマドが、どんな景色を見せてくれるのか──それを想像するだけでワクワクが止まりません。
さあ、ハンドルを握って出かけよう。
ジムニー・ノマド──それは、暮らしと冒険のあいだを自由に走れる1台だ。

